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TECHNIQUE

はじめに

私がここで執筆するヴァイオリン技術は,星の数ほどある方法論のほんの1つに過ぎません。

その内容についてはいろいろなご意見もあるかとは思いますが,あくまでも私が師匠から受け継いだ演奏技術の個人的メモということをご理解ください。

ただ,演奏技術を文章化することには限界があり,私本人しか理解できないような表現も多々あります。これらは,今後できる限り理解し易い表現に改善していく予定です。また,必要に応じて具体的な音源や楽譜等でフォローすることも検討しています。

■レッスンではこれらのテクニックを分かりやすく説明いたします。

(ここに記載されている文章・画像・音源等の無断複製・掲載は固くお断りいたします。2011/04/01)


Technique Comment

時折,加筆・修正を行っています。ポイントは赤線で示しています。

» このマークで代表的なEtude(使用教材参照)を示しています(難易度順)。

Stance

  • 足は肩幅に!
  • 軸足は左(かかとが地面から離れないように)
  • 楽器は3塁側,弓は1塁側!
  • 楽器を構えるときに左肩が上がらないように!
  • 左上腕を胸部とくっつけないように!
  • 音を出す前に必ず準備(指を押さえて→弓を弦に置いて)

Left Hand

注:私は左手の小指が短く,日頃よりその克服を心がけておりますので,小指の長さが十分確保できている方には,一部あてはまらないコメントがあるかもしれません。

Form

  • スケールに使用する基本形として,以下の4パターンの左手フォームを確立する(このパターンを維持したまま各指を独立して自在に動かせるように)。
    a) 12_3_4(1,2指が半音)
    b) 1_23_4(2,3指が半音)
    c) 1_2_34(3,4指が半音)
    d) 1_2_3_4(すべて全音)
  • 押さえていた指を離しても上記パターンを崩さずにキープできるように(歯科矯正のようなイメージ)。ただし,くれぐれも力まないように…
  • ヴァイオリンにとって基本的な音程は完全4度(上記パターンabcの1-4の間隔)。この音程を揺るぎないように!
  • 指を拡げるには,1)手の平から拡げる感じ,2)各指を真横に拡げるのではなく,人差し指から小指までを蛇腹(扇子?)のように前後に立体的に拡げる感じ
  • 左手指先は自分の顔に向くイメージで配置(指先には斜め45°に弦の痕が付くように)
  • 左手の手首(手の甲から前腕)は平らになっているのが基本

Shifting

  • 上行では親指同時,下行では親指先行が原則
    手元に近づく場合は距離感を把握しやすいが,離れていく場合は距離を図りづらいので,親指先行で次のポジションを導く
  • シフトのガイドは最後に残っている指を基準にする
    その指を移行後のポジションへスライドさせると中間音符になる
  • 8ポジション以上は親指はネックに固定してよい
  • 高いポジションでは,親指と人差し指との「輪」を拡げる感じで!
  • シフトでは常に位置感(ポジション)と距離感(移動量)を意識すること

Vibrato

  • 基準音から低い方へ,左手の甲でドアをノックするイメージ
  • 往復運動のうち「往」のみ意識すれば「複」は考える必要なし
    適度に脱力できれば,勝手に腕は戻っている(戻す作業は不要)
    「往」は腕を前に出すというより,下に落とすような感覚
  • 左指は弦の上をスライドできるように軽く押さえる
    最初のうちはフラジオレットと同じくらいの軽さで練習
  • 腕を動かして5度(ex.A線のH-Fis)の上下運動からはじめる
    この段階では手首は使わない
    徐々に速く,徐々に音域を狭くして,最後に一点に集中
  • アルペジオや速いパッセージでは原則ヴィブラートなしで!
    アルペジオは和音がぼやけるし,速いパッセージではかけても効果が薄い(例外はあり)
  • 曲やフレーズの終わり(静かに終わる系)は,徐々にヴィブラートの幅を狭く,細かくすると終始感が得られる!
  • ヴィブラートを細かくかけ続けることで,左指の緊張をほぐす効果がある

Double stops

  • 上の指を基準にして下の指を拡張してとる
    ex.2-4の3度では4を押さえてから2を,1-4の10度では4を確保してから1を拡げてとる
  • 低いポジションで指が拡がらないときは,少しだけ手首を谷折り(本来禁じ手)にしてみると弾きやすくなるかも
  • 左掌は横には拡がらない→縦(前後)の立体的に拡げることで距離を稼ぐ
  • 3度では,長3度と短3度の距離の違いを意識する(短3度の方が長3度より指を拡げないといけない)。スケールとしては短2度の順次進行部分を注意して練習
  • 6度では,長6度と短6度の距離の違いを意識する(短6度の方が長6度より指の感覚が狭い)。
  • 8度(単純)では,2,3(中指,薬指)は弦から離して上げておく(荷物を軽くして1指,4指の負担を軽減)
  • 8度(フィンガード)では,指を拡げるだけで十分でそれ以上弦を押さえようとする必要なし。音程はまず下の音で正確にとる(最初のうちは上は少々間違っても気にしない)。指の形は3度と左右逆転したものが拡がっただけ(3度の応用と考えればよい)。
  • 10度は,特に小指を中心に人差し指を拡張するように考える。親指をネックにあてたまま(固定)でよい。
  • unison(ユニゾン)も小指を確定してから人差し指を拡張する(例えば,D線の2ポジでB♭を4指でとってからA線の人差し指を徐々に拡げてB♭に近づける)。手の小さい人は,相当にきつい拡張になるので,あえて左手首を谷折りしてネックに近づけるように(それでも届かない場合は,親指を小指側に持ってくると,より指が拡がるかもしれない…本来は禁則のフォーム)

Others

  • トリルなどで小指を速く動かす場合は,小指の内側(左側)の筋肉を意識する!
  • 4の指で強い音が必要なときは,親指でサポートする感覚で
  • 左指を押さえる力は弦の振動を感じることができる程度が望ましい
    くれぐれもぎゅうぎゅう押さえつけないように

Right Hand

Bowing

  • 弦-弓-前腕-上腕は原則同一平面に保つ
  • 全弓(∩では蛇口を徐々に左に捻る,∨は徐々に右に捻る感覚で)
  • 弓先に向かうにつれて,右肘を前方に押し出す感覚(後ろに引いてはならない)
  • 弓のしなりは,親指逆圧(上向きの力)と人差し指(支点)のテコの原理を使う
  • 和音や終止形などで音を弾ききるときは,反時計回りに弓を押し出して!

Détaché(デタッシェ)

  • まずは中弓より少し先を中心に前後7~10cmくらいで練習→その後,先弓,元弓でもできるように!
  • 基本は弓は倒さずに弓毛全面を接点として練習する!
  • 弓の弦に対する圧力はむらなく均等に!(弓がふわふわしないこと)
  • ∩と∨で音の違いがないように!(逆弓で練習することも必要)
  • 前腕を意識すれば音が抜けない!
  • ∩は捻りながら少し右前に押し出す感じ(単純な横運動ではない。Bowingの項参照)
    » Kreutzer No.2,Rode No.2,Dont No.2

Martelé(マルテレ)

  • デタッシェが等速運動であるのに対して,マルテレは瞬間運動(発音直後に目的地に到達しているイメージ)
  • 手首の重さだけで弓を止めるのが基本
  • 移弦を伴う場合は,移弦先で弓を止まっているように!(この時,左指の準備も忘れずに)
    »Kreutzer No.6,Rode No.1

Staccato(one bow)

  • Marteléの応用技術(極めて短いマルテレが同じ方向(∩又は∨)に継続する)
  • アップでは弓棹を外側に倒して弓毛を内側に!(右手は体から離れた軌道)
  • ダウンでは弓棹を内側に倒して弓毛を外側に!(右手は体に近い軌道)
  • いずれもスキー板のエッジをかける動作と同じで,弓毛が弦にくい込むようにする
  • なるべく弓の量を少なく使い,同じ場所にとどまり続けることができるように!

Sautillé

  • Détachéの応用
  • Détachéの弓幅を狭めて,弓のしなりを解放していくと,自然と弓の持つ弾力によっていわゆる半跳ばし状態のソーティエ(Sautillé)になる。
  • 自ら積極的に弓を跳ばそうとしない。脱力の結果,跳んでしまっているという感じ(Spiccatoとの違い)

Spiccato

  • 前腕をレコードプレーヤーのアームのイメージで,弓を弦から2cm上空で待機し,そこから放物線を描いて弦と一点で接地した後,再び上空2cmへ上がり待機状態へ(この動きの連続がSpiccato奏法)。但し,この際,弓の横運動は必要最小限に(決して右肘起点で弾かないこと)。
    同じく弓が跳ぶ奏法であるソーティエと異なり,自らの意志により弓を跳ばす奏法である
    音が固くならないように右指を柔らかくして衝撃を吸収するように!

String Crossings

  • 移弦はシーソーの原理なので,基本的には中弓が有利!
  • 隣弦への移弦は原則「手首」で!
    手首と前腕が水平状態を0とすると,高弦側への移弦は+1右回転,低弦側への移弦は-1左回転(裏拳?)
  • ∨での低弦側への移弦はわずかに(気持ち2~3cm)右手を前方に出すとやりやすくなる
  • 1弦以上跨ぐ移弦は「前腕回転」で!

Ricochet(Arpeggio)

  • ゆっくりから練習!
  • 気持ち駒寄りで,弓幅は狭く!
  • ∩と∨のスピードが同じになるように
  • 中弓より少し元くらい?で各自の弓のベストポイントを探す(弓先はコントロールが難しくなる)
  • 横に弾くのではなく,前腕ごと縦に上下させる感じ!

Others

  • 弓を持つ指の意識について~楽器の構造(魂柱,バスバーの位置)から導かれるもの~
    E線:人差し指を意識(弦の張力に弓がはじかれないように輝かしい音を)
    A線:薬指を意識(パールアイに触れるイメージで柔らかな音を)
    D線:中指を意識(暖かい音色を)
    G線:親指と小指を意識(しっかりと支えて深い音を)
  • 柔らかい音色が必要な場合,弓を倒して弓毛の接点を少なめに!
  • 右肘の高さをキープする(上げる)場合は,その目的を考えることが大切。すなわち,弓の重さを取りはらうために上げる場合と,逆に弓に力を与えるために上げる場合とがあることに留意する。

Practice

  • つっかえず(立ち止まらない)に弾けるテンポでゆっくりから練習を!
    決してつっかえる練習(癖)になってはいけない
  • リズム練習は合計6パターン実施
  • 速いDetacheのパッセージは,すべての音を2分割し,その前後の音をスラーで繋いで練習すると効果的(一音一音マルテレで止める練習や,各音を3連符にする練習などもある)
    いずれにしても急がば回れ!
  • 暗譜は後半から(音をすべて3連符で練習する方法なども効果的)

Others

  •  高速で高音域に駆け上がるパッセージは,左肘で楽器を少し持ち上げていく感じにすると弾きやすくなる。

Carl Flesch Scale System (C-Dur)

No.1

  1. 1小節:順次進行の基本スケール
    1)確実な音程と,2)確実なシフティング(ポジションチェンジ)
    1. 音程
      確実な音程に聴こえるために大切なことは,第3音「ミ」と第4音「ファ」の間,第7音「シ」と第8音「ド」の間をオーバーなくらい狭くとること。この2つの短2度音程がC-Durのアイデンティティとなる。
    2. シフティング
      No.1(G線)の場合,3ポジで始まり,5ポジ,7ポジとシフトアップし,6ポジ,3ポジとシフトダウンするというポジションの意識が必要。
      多くの方が悩むシフト時の左手親指の位置は,シフトアップでは同時に,シフトダウンは親指を先行させる(親指を先にポジションダウンしておく「親指を抜く感覚?」)。これは一般に,近づいてくるもの(左手)の距離は測りやすく,遠ざかっていくもの(左手)の距離は測りにくいことからのこと(ただし,これには反対の流派もある)。

  2. 2-5小節:同一弦上のアルペジオ(分散和音)
    1)C-G間の5度(減7アルペジオではC-Fis間の増4度)音程を人差し指で滑らかに往復(3ポジ⇔7ポジ)できるようにすること,2)熟練するまでの間,シフトダウンでは押さえている指をガイド(中間音)にして練習すること,3)シフトダウン時の親指先行は,前に述べたとおり。
    なお,メトロノームは8分音符刻みでかける(3連符毎に2カウント)。

  3. 6-7小節:3度スケール
    1)1指と3指はシーソーのように重心移動する,2)シフトは2の指(中指)のスライドによって導く,1)2)の結果,上行形では「1→3→2⇒2」,下行形「3→1→2⇒2」(初回のみ4→2)の繰り返しとなる(注:⇒はシフトを表す)
    3)音程は,順次進行のスケールと同じ(E-F間,H-C間をピタゴラス音律で)。

  4. 8-9小節:クロマティック(半音階)スケール
    1)上行形は親指と同時にシフトアップ,下行形は親指先行(親指抜く)でシフトダウン(初めのうちは,G-E間,E-Cis間という短3度を1指をガイドする)
    2)ポジションを上がるほど,弓をしっかり持って音を出す。

No.2,No.3,No.4

  • 基本的にはNo.1の練習と同じで,弦が順次D線,A線,E線となるだけ。
  • C-durでは,G線が3ポジ~7ポジの移動であったのに対して,D線は6ポジ~10ポジ,A線は2ポジ~6ポジ,E線は5ポジ~9ポジとなっている。すなわち,どのポジションからスタートしても同じパターンで処理できる練習になっている。これは調が変わってもスタート位置が変わるだけで移動方法は同じということで,カールフレッシュの教本が単なる「スケール」ではなくスケール「システム」とされている所以である。ちなみに,C-durのD線は6ポジスタートなので,かなり高いポジションへの移動を強いられるが,この教材上はこれが最大と思っておいてよい(7ポジスタートは1オクターブ下の開放弦からスタートできるので)

No.5

  • 最も基本的なスケール。時間がないときは,これだけでも毎日弾く。
  • メトロノームは1拍あたり2カウント。No.5全体を一貫したテンポで。
  • 最初のCの音程は開放弦のGを鳴らして確認すること(ドミナント→トニックという基本進行を意識)
  • アルペジオは,和声進行(近親調)と左指の形(特に完全4度の音程)を意識しながら練習!
  • 3度スケールと半音階は,No.1の説明を参照

No.6

  • 毎日練習するのは最初4小節だけでよい(この中に下行形も含まれているので)。但し,時間がある場合はその先もさらってみる。
  • まずは長3度と短3度を明確に意識しながら練習する
  • 指の間隔は長3度の方が短く=狭く,短3度の方が長い=広い(日本語の語感と逆!)
  • 短3度のときにしっかり指を拡げるようにする

No.7

  • 毎日練習するのは最初4小節だけでよい。時間があればその先も。
  • まずは長6度と短6度を明確に意識しながら練習する
  • 指の間隔は長6度の方が長く=広く,短6度の方が短い=狭い(日本語の語感どおり!)
  • 短6度で指をくっつけ,長6度でひらくようにする

No.8

  • 毎日練習するのは最初4小節だけでよい。時間があればその先も。
  • 1指と4指をシフトさせていくが,ギュウギュウ押さえない!(単音のときよりも押さえる力は少ないくらいで)
  • 使わない2指,3指は指板から離す(力は入れずに垂直方向に上げておく。余計な荷物は放り出して!)
  • オクターブの下の音と上の音は80:20くらいの気持ちで,下を強く

    a:11070 t:2 y:12

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